第10章 親子のカタチ
トコトコと、ナナがNに近寄る。Nはキョトンとしながらナナへと向き直った。
「N、私さ、やっぱりゲーチスが許せない」
あいつは急に何を言い出すんだ?傷に塩でも塗るつもりか?
いつもそうだ。危うくて予測不能で、こっちはハラハラさせられっぱなしだ。
「…それは当然だ。あの人はイッシュだけでなく、パシオでもまた悪事を働こうとしていた」
「ちがう。私は、プラズマ団のゲーチスが許せないんじゃないの」
ナナは俯いたまま、肩を小さく震わせる。唇を強く噛んで、感情を少しずつ言葉にする。
「父親と名乗ってNの想いを利用して、踏みにじって…!Nは何も特別なことを望んだわけじゃないのに…!親子として…ただ…」
オレからしてみれば、家族が仲良いことが“特別”だけどな。
頭の中が平和なお花畑で世間知らず。
おせっかいに首を突っ込んで、自分のことみたいに泣く。ほんと、面倒くさいヤツだ。
「ナナ…」
Nはナナの肩に手を乗せると、フッと口元を緩ませた。
「ボクを心配してくれているんだね?ボクなら平気だよ。こうして共に笑い、共に悲しみ、寄り添ってくれるトモダチがいるから」
ナナは顔を上げ、Nをまっすぐ見つめる。
「じゃあ私、Nといっぱい笑いたい。Nをもっと笑わせたい。悲しいことを忘れるくらい」
「いいね!ボクもその話乗った!どっちがたくさんNを笑わせられるか勝負しよう」
トウヤがナナの言葉に同調して、優しい勝負を持ちかける。
「アハハッ!アリガトウ!」
声をあげてNが笑った。
ナナは笑顔だったが目が少し赤い。トウヤも泣きそうになるのを堪えて笑っている。
それはきっと、ふたりとも勝負なんて関係なく、Nに笑顔でいてほしいからだろう。