第10章 親子のカタチ
ホウオウをボールから呼び出すと、薄暗い洞窟を煉獄が明るく照らした。
「ぶっ倒してやる!」
「フッ、威勢だけはいいようだな」
ニドキングはどく・じめんタイプを併せ持つ。じめんタイプのわざは、狭い洞窟といえどホウオウには届かない。
焔の軌跡を残しながら優雅に翼をはためかせ、徐々に距離を詰めてゆく。
「いい動きだ」
「余裕ぶってるのも今だけだ!」
先の戦いで疲労が蓄積していたのか、ホウオウが一瞬飛行速度を緩めた。その隙をオヤジは見逃さなかった。
ニドキングのどくづきがホウオウの片翼に直撃し、ホウオウの身体がぐらつく。
「くっ…じしん!」
どくとじめん、相反するタイプを持つニドキングにはじめんタイプのわざも有効だ。
洞窟内の地面が激しく揺れ、ニドキングの巨体が倒れて全身を強く打ち付ける。ロケット団員の悲痛な声が響いた。
サンダース対策で覚えさせておいたじしんが、まさかこんなところで役に立つとはな。
ホウオウをすばやく洞窟の天井ギリギリまで退避させ、じこさいせいで回復させる。
「なるほど、さっきよりもポケモンとの連携がうまく取れている。だがそれはお前の弱点でもある」
「どういう意味だ」
「お前がひとりにこだわるのは仲間が邪魔だからか?仲間がいれば当然、独りよがりな戦い方では通用しない。それが面倒だから、お前はひとりで強くなれると過信している」
「それがどうした。仲間なんてただの足を引っ張るお荷物にしかならない。リーダーがいないと何もできない、強いヤツに従って偉ぶるようなお前らみたいな連中がオレは大嫌いなんだよ!」
「このガキ…ッ!言わせておけば…!」
「やめなさい!」
ロケット団のひとりがモンスターボールを投げようとすると、それを幹部のアポロが制する。
「しかしっ、アポロ様…」
「サカキ様の勝負に水を差す気ですか?」
「……はッ!失礼しました!」
ロケット団員は、握り締めていたモンスターボールをバッグへと戻した。