第10章 親子のカタチ
Nたちが無事に洞窟から脱出したのを確認し、きびすを返す。
ロケット団の調査について、もともとオレは単独行動を取ると宣言していた。だからそれに従ったまでだ。
だが、オレが今、こうしてひとりで戻っているのはそれだけが理由じゃない。Nを見ていたらいてもたってもいられなくなったんだ。
あからさまな罠だったのにもかかわらず、ゲーチスと向き合ったNの決断に、オレ自身が感化されたのかもしれなかった。
「愚かだな。逃げられたのにわざわざひとりで戻ってくるとは」
案の定、オヤジとロケット団は、洞窟内の入口付近の開けた場所で待機していた。隙を見ていつでも襲えるぐらい、近い場所に。
「用意周到なあんたのことだ。どうせ引いたフリして奇襲するに決まってる。それを阻止しに来たまでだ」
オヤジが片方の口角を上げてフッと笑う。そんな安い挑発に乗ると思ってんのか?
「この数とどうやって戦うつもりだ?幼稚なプライドに固執して、ひとりにこだわる理由はなんだ?」
「おれはあんたのようにはならない、なりたくもない」
「ならば力で証明するんだな」
「そうさ…!証明しに来たんだ!リーダーなら仲間なんかに頼るな!オレとサシで勝負しろ!」
「サカキ様!構う必要ありません!この子は…!」
横槍を入れるアポロに向かい、オヤジは腕を伸ばし手のひらで遮った。
「いいだろう、かかってきなさい」
オヤジが指を鳴らすとニドキングが現れる。ジムリーダーの頃から連れ添ったオヤジの相棒。
身体のあちこちに残った古傷に見覚えがあるから間違いない。
ニドキング、オレはガキの頃、お前にずっと憧れていた。
オレは今、お前を倒さなくちゃならない。
お前を超えないといけないんだ。
オレが信じた道を証明するために。