第10章 親子のカタチ
レシラムに先導されながら、一同は戦場と化した空間から抜け出した。
帰り道はNのおかげで迷うことは無かったけど、追ってきたロケット団に応戦しながら進んだため、脱出までだいぶ時間と労力を使ってしまった。
「ようやく出られた…よかった」
無事に洞窟の入口まで戻ってこられて安堵の息をつく。追手はもういないようだ。ヘトヘトになりながらペタリとその場に座り込んだ。
「助かったよトウヤ!レシラムも来てくれてアリガトウ!」
「グリーンさんから連絡が入って、Nの名前を聞いたらいてもたってもいられなくなってさ」
トウヤくんがニコリとすると、Nも笑顔を返す。
この人がNが言っていた大切なお友達、トウヤくんか。まっすぐで正義感に満ちた瞳の持ち主だ。優しそうで、どことなーくだけどレッドに似た雰囲気を感じる。
トウヤくんはあたりをキョロキョロと見回している。
「あれ?ゲーチスとキュレムは?」
Nはかぶりを振った。
「洞窟を出たら何も言わずに去ってしまった。本当は少し話す時間が欲しかったけど、それすらも叶わなかった」
そう言って、Nは表情に影を落とす。
「ロケット団とどうやら仲違いしていたけど、また何か企むかもしれない。だからボクはパシオにいる間、あの人を見張ろうと思う。それに——」
Nさんは私に目配せする。
「聞いてトウヤ。新しいトモダチができたんだ。ナナっていうんだ」
Nが紹介してくれたので、名乗りながら頭をぺこりと下げた。
「トウヤくんのこと、Nから聞いてます。助けにきてくれてありがとう!」
「こちらこそ!Nとゼクロムを守ってくれてありがとう」
「ボクは彼女とWPMに出る。ゲーチスのこと、ロケット団のことも気がかりだから、しばらくはパシオに残ることにしたよ」
「よかった!Nのことだから、またすぐ旅に出るんじゃないかと思ってた」
「そんなことはしない。ずっと探していたトウヤとも再会できたしね」
過去にNとトウヤくんにどんなエピソードがあったのかはわからないけど、ふたりとも再会を心から喜んでいるようだ。
「そだ、トウヤくん、もうひとりのチームメイトも紹介するね。シルバーくんって言うんだけど……あれ?」
シルバーくんを紹介しようとしたところで、いなくなっていることに気がついた。