第10章 親子のカタチ
「援護します!サカキ様!」
アポロと呼ばれていた男の人が、サカキの隣に並んだ。
サカキとアポロ対ゲーチスとNというタッグバトルになる。
Nたちが戦い始めると、シルバーくんが私に目配せをした。
「おい、わかってるな?」
「もちろん!」
ロケット団員は数えきれないほどいる。ならば私たちで、したっぱたちの数を減らすのが得策だ。
だけど、こう数が多くては流石にふたりでは倒しきれない。私とシルバーくんは、互いに背を向けながらぐるりと取り囲まれてしまった。
「うう…どどど、どうしようっ」
恐怖で涙目になる私を、シルバーくんが叱咤する。
「怖がるな!泣くのは勝ってからにしろ!」
「でも、でもぉっ!」
「ならそこでウジウジしてろ!オレひとりで片づける!」
シルバーくんのバディストーンが光り輝くと、石の力で威力と範囲が増加したせいなるほのおが、周辺のポケモンたちを一掃した。
「わ、私だって…!」
ホウオウに続き、サンダースもバディーズわざを発動させる。けれど、ロケット団は次から次へと湧いてくる。
「チッ、キリがない!」
そろそろPPが底をつきそうだ。数の暴力をまざまざと見せつけられる私たち。徐々に状況が悪化していく、その時だった。
突然、眼前に、白い羽毛に全身が覆われた飛竜のような神々しいポケモンが現れた。その背には男の子が乗っている。
「助けにきたよ!N!」
まるで、神話の絵画から出てきたように美しく気高い姿だった。
「…トウヤ!」
暗闇に光明が差したように、Nの表情が明るくなる。
「おぉ…レシラムまで集まるとは…!これは偶然ではなく必然!やはり3匹は互いに引き寄せ合うのですね!」
突如現れた男の子は、ゲーチスとNが共闘している光景に動揺を隠せないようだった。
「どうしてゲーチスとNが!?」
けれど、親子と敵対するミュウツーの姿、大量のロケット団を見て、すぐに状況を飲み込んだようだ。
「レシラム!みんなに道を作ろう!」
レシラムがあおいほのおで辺り一面を火の海にする。それに合わせ、ホウオウの焔、サンダースの電撃で周囲のロケット団はたちまち戦闘不能になった。
ロケット団員が退避し、一筋の道ができる。
「N!今のうちに!」
「わかった!」