第10章 親子のカタチ
「なに、わたしはゲーチスという男をよく理解しているのでね、先手を打たせてもらったまでだ」
「なんですって…!」
「2匹の伝説ポケモンを手に入れたら、次に企むのはパシオでのプラズマ団の拡大。当然、勢力を広げているわたしが邪魔になり、消そうとするはず。最大限のリスクを想定し、回避するのもビジネスにおいて必須だろう?つまり——」
落ち着き払って紳士ぶっていたサカキが、ついに本性を表す。
「——ゼクロムとキュレムは、わがロケット団が手中に収めるというわけだ!ふはははは…!」
サカキは勝ち誇ったかのように両腕を広げ、哄笑を高らかに響かせる。その背後に、ぞろぞろとロケット団員たちが集い始めた。
「サカキ…やはり食えぬ男だ!ですが甘いですよ…!」
次はゲーチスがどこからともなく複数のブレイク団員を呼び寄せ、その周囲を取り囲ませた。
ブレイク団員たちは肩を並べ、まるで盾のようにゲーチスを守る。
「既にブレイク団の一部は、ワタクシについている!さぁ、サカキを倒すのです!」
「ほう?さすがはプラズマ団の主導者といったところか」
突如、ブレイク団とロケット団の抗争が勃発する。狭い洞窟内では怒号が飛び交い、ポケモンたちの攻撃が轟きわたった。
「どういうこと?仲間割れ?」
身を屈め、争いから距離を置く。
「いや、もともとそんな関係でもなかったみたいだ」
「オレたちにとっては好機だ。今のうちに回復するぞ」
「うん!」
私たちがポケモンを回復する横で、Nは複雑な表情を浮かべながら抗争の行く末をじっと見ている。