第10章 親子のカタチ
「なぜサカキがここに…!」
驚愕の表情を浮かべるN。やはり、ロケット団とゲーチスは既に手を組んでいたようだ。
「フッ、ビジネスだよ。ブレイク団を集めていた時に彼と出会い、取引をしてね。利害関係が一致したからこうして駒の手配もしたのだ」
「ええ、あなたには感謝しています。必ずや力を手に入れて協力しましょう」
ロケット団のサカキ。あまりにも有名なその名を知らない者はきっといない。こうしてサカキ本人と対峙するのは初めてだ。サカキとゲーチスが並ぶ最悪なシナリオに、抑え込んでいた恐怖心が胸の中に広がる。
強大な悪の組織を統率する彼らは、私のチームメイトの父親でもある。皮肉な運命に、どうしようもなく心がざわつき、呼吸が震えた。
「さて、邪魔者にはおとなしくなってもらおうか」
サカキがまた指を鳴らすと、ミュウツーはサイコキネシスをサンダースに向かい放った。
「……あ、しまっ——!」
「ホウオウ!」
シルバーくんがホウオウの名を叫ぶと、ホウオウはサンダースを庇いダメージを受ける。
「シルバーくんっ、どうして!?」
「下がってろ!」
シルバーくんが私とサンダースを庇うように、すっと腕を横に伸ばすと、そのまま迷いなく前へと歩み出た。
「オレひとりでやる。手出しはさせない」
「でもっ」
「いいからお前はゼクロムを!」
「…わかった!」
Nの元まで下がると、シルバーくんはサカキに向き直る。ありったけの敵意を剥き出しにして、静かな怒りを言葉に宿した。
「パシオで何か企んでるようだが、あんたの計画ぶっ潰してやる…!」
「面白い。相手をしてやろう」
ホウオウとミュウツーが、狭い洞窟内で目まぐるしい勝負を繰り広げる。