第3章 Ever green!②
「ナナ!」
返事をせず洞窟に向かう。
気持ちを切り替えて試練に挑まないと。
風でボサボサになった髪を手櫛で整えながら前に進むと、いつの間にか追いついたグリーンが私の肩に腕を回してきた。
「悪かった。機嫌直せよ。な?」
表面上は謝っているけれど、全然悪びれる様子じゃないのがひしひしと伝わってくる。
その明るい態度が、余計に私をみじめな気持ちにさせる。
歩みを止めてグリーンに向き直った。
「怖かった」
「ん?」
いっぱい怒ってやる、言い負かしてやる。
「本当に、私、怖くて…」
そう思っていたのに、感情を抑え込もうとした反動で、一気に想いが弾け飛ぶ。
「じぬがどおぼっだーー!」
「うぉ!?」
突然の大号泣にグリーンが一歩後退する。
ぽろぽろ涙が頬を伝っては地面に落ちてゆく。
「で、でもよ、おかげで早く着いたろ?」
「づいだげど!ばやずぎぶ!ぎぜづじぞうになっだんだがらー!」
「わかった、わかったって。はいはいオレが悪かったよ」
まるで幼児をあやすように頭を撫でられる。
グリーンは、なおも泣き止まない私を見て、「やれやれ」と嘆息しながら腕の中に招き入れた。
「お前、相変わらず泣き虫で手がかかる妹みたいだな」
「妹…じゃないもん」
「そりゃそうだけどよ」
鼻を啜りながら、ふと、弱音を吐く。
「そんなに私、頼りない?グリーンにとって私はただの妹なの?」