第10章 親子のカタチ
「交渉決裂だ、やるぞ」
シルバーくんは冷静な態度を崩さぬまま、すぐさまホウオウを出した。
「っ、わかった…」
思考が追いつかないまま、私もサンダースを呼ぶ。
「おっと、嬢ちゃん達は大人しくしてな!」
スカジャンの男とガタイのいい山男が、ワルビアルとフワライドで挑んでくる。シルバーくんの鋭い目つきが前方へと注がれた。
「つくづく救えないヤツらだ。自分たちでは力が無いから支配する者に付き従い、強くなった気でいる」
ホウオウがせいなるほのおをくちばしの先で生み出すのに合わせ、私もサンダースへ指示を出す。
「サンダース、ホウオウと攻撃を合わせるよ!」
焔と電撃が組み合わさった攻撃が2匹の全身を覆い、あっという間に戦闘不能にした。
「うぉぉ!またしてもコイツら!」
「でも時間は稼いだぜ!」
ゲーチスは、私たちの勝負には目もくれず、スーツの男に命令をする。
「やりなさい」
「御意!」
スーツの男がスリーパーに指示を出すと、スリーパーは、ゼクロムに向かい何か特殊な念波のようなものを飛ばした。
「ゼクロムッ!?」
格子状のオーラのようなものがゼクロムを捕らえる。捕えられた網の内側から、ゼクロムは翼をはためかせたり、攻撃しているのにびくともしない。
「動くことはできませんよ。ゼクロムを捕らえるために特殊な処置を施したポケモンですから」
あのスリーパーは、この時のために改造されたということだろうか?
どこまでも非道な男だ。
握り締めた拳が震える。
「どうしてこんなことをするんですか!ゼクロムを解放して!」
「やはりあなたが言ったあの言葉は…」
Nの瞳が曇る。
「フフ…当然でしょう?くだらない猿芝居はゼクロムを手に入れるため…」
トン、と威嚇するように、ゲーチスが杖で床をついた。
「あなたのようなバケモノとこのワタクシが、家族になるわけがないでしょう…!」
Nの表情が、押し殺した悲しみを滲ませてわずかに引き攣った。