第10章 親子のカタチ
「平気だよ。どうすべきかはボク自身で決めたことだ」
不意にNの歩みが止まる。
前方を見やると、大きな人影が近づいてくるのがわかった。
「N、待っていましたよ!」
低い声音が洞窟に響き渡る。
おどろおどろしい目の模様のマント、プラズマ団のエンブレムを施した杖。何度見ても不気味な風貌に背筋が寒くなる。
「本当に来てくれたんですね…」
Nはゲーチスと対峙すると、一瞬躊躇う素振りを見せてから、キッと前方を睨み据えた。
「答えを伝えにきました」
「それで、答えとは?」
「……あなたは言いましたね、もう悪さはしないと。そして、ボクと本当の親子になりたいと」
「ええ」
「なら、ボクとポケモン勝負をしてください。勝負を通じて、あなたの心にラブがあるのかを確かめさせてください!」
Nはゼクロムを呼び出した。尻尾に蓄えられた電気が洞窟内を青白く照らす。
「お願いだ……とうさん!」
ゼクロムを見たゲーチスは、妙に落ち着き払った態度で、ボールからキュレムを出した。
「感謝します、N。このようなチャンスを与えてくれるとは……」
私とシルバーくんは、固唾を飲んで親子のやり取りを見守る。
どうか、お願いします。Nの願いが届きますように。
Nをもう裏切らないで。
親子として、やり直せますように…!
「そう——」
けれど、次の瞬間状況は一変する。
「ゼクロムを得る機会を…!」
死角から、黒白のマスクで目元を隠したブレイク団が現れた。
背が高いスーツの男と、スカジャン、山男——って、
「あんた達は…!」
「おや?またあなたですか?」
3度目の再会。怒りを通り越してさすがにもうこりごりだ。