第10章 親子のカタチ
翌日、私とシルバーくんは、ゲーチスに会うというNに付き添い、待ち合わせに指定された洞窟に向かった。
ヒナギク博士やグリーンにも、Nとゲーチスが接触することは伝えてある。ふたりともNの意志を尊重し、反対はしなかったけど、グリーンには手に負えない状況になったらすぐ連絡するよう念を押され、送り出してくれたのだった。
ヒンヤリとした空気、不気味な薄暗さ。この洞窟には一度来たことがある。
以前、風車の町でいざこざがあったブレイク団のアジト跡だ。グリーンが壊滅させたから、ここにはもうブレイク団はいないはず。
運良くゲーチスが見つけて、隠れ家にしているのかもしれないし、あるいは——。
思い浮かんだネガティブな想像をすぐに思考から取り払う。
ゲーチスと話すと決めたNの決意に、泥を塗るようなことは考えちゃダメだ。
それにしても長い洞窟だ。こんな奥まで続いていたっけ?
なんて思いながら進んでいると、シルバーくんが話しかけてきた。
「随分奥まで来たな。しかも道は入り組んでいて、まるで暗闇の迷路だ」
「ちゃんと帰れるかな…」
「それなら大丈夫。ボクは全て覚えているから」
「さすがN」
Nの言葉や行動の端々に地頭の良さを感じてはいたけど、彼はやはり只者ではない。纏うオーラも冴えわたる思考も、全てにおいてカリスマ性を秘めている。
「そうだ、お礼がまだだったね。ふたりとも、ついて来てくれてアリガトウ!」
「全然気にしないで!仲間だもん!」
「仲間」という単語に不服そうなシルバーくんは無視するとして……、
「N、不安はない?」
Nはこれから父親に会おうとしている。かつて自分を利用し、傷つけた相手と正面から向き合うために。
きっと、心の奥には覚悟と同時に葛藤や恐れもあるはずだ。