第10章 親子のカタチ
(…シルバー…くん…?)
シルバーくんは私を組み敷いたまま、じっと視線を逸らさない。
身体が動かせない。いつもと様子が違う。なんだろう?何を伝えたいの?
絡みついた指の力がギリギリと強まる。
(指、いたいよ…)
片手が解放されたかと思うと、そっと顔に手が伸びてくる。そして、目尻に溜まっていた涙を優しく指が掬った。
ほんの一瞬、シルバーくんが頬を緩ませる。それはいつもの嘲笑ではなく、どこかあたたかくて、ぬくもりに満ちているような気がした。
シルバーくんは視線を縫い付けたまま、顔にかかる髪を流すように頭を傾ける。サラサラな髪がまた頬をくすぐるから、微かにみじろぎすると、片方の髪を耳にかけて小さく笑った。
身動きが取れないまま、困ったように首を傾げて見つめ返す。すると、シルバーくんの視線が迷うように唇に落ちた。
鼓動が早鐘のように鳴っている。絡まり合った指に熱がこもる。
(ねぇ、どうしたの?何か言って…)
消え入りそうな声で懇願すると、シルバーくんは眉を寄せて表情を険しくする。そして、私の頬を片方の手で包み込み、指の腹でそっと撫ぜた。
「オレには必要ないと思っていたのに…」
「な、にが…?」
戸惑う心とは裏腹に、あまりにも指先が優しくて目を細める。まるで、言葉の代わりに何かを伝えようとしているよう。
心地よさと気恥ずかしさ、いつもと違うシルバーくんの様子に、頬が熱くなるのを感じた。
「お前といると…オレは……」
指先が微かに唇に触れた時だった。
「あれ?確かこっちから声がしたはず」
Nの声が近づいてくる——と、シルバーくんはゆっくり身体を離した。
「行くぞ、Nのところへ」
手を引かれ起き上がる。立ち上がって砂を払いながらシルバーくんを見ると、いつものように私を睨む彼がそこにはいた。