第10章 親子のカタチ
半眼で呆れ切った顔のシルバーくんと視線がぶつかる。
やっぱりバレていた。
(お前、懲りずにまた…)
(泣いてないっ、泣いてないから!)
涙を手で拭い、手を振り切ろうと肩を振ると、
(待てっ、ジタバタするな……って、おいっ!?)
「あ、ちょとっ!」
ふたりでバランスを崩しドタドタと砂浜に倒れ込む。反射的に受け身を取ろうと身を屈め、目をつぶった刹那、頭の後ろに手を添えられた感触がした。
頬を何かがくすぐる。ゆっくり、瞼を開けると、それはシルバーくんの髪だった。
仰向けに倒れた私の上に覆い被さり、こちらをキッと睨みつけている。
(…怪我はないかよ)
そう聞かれ、周りを見ると、先の尖った流木が顔のすぐ横にあった。ぶつからないように庇ってくれたみたいだ。
こくりと頷く。
「ごめん、私、泣いてるのバレたくなくて…」
シルバーくんが口元に人差し指を立てる。慌てて声を潜めた。
(怪我はしてないよ、ありがとう…)
(フン…この貸しは今度必ず返してもらうからな)
いつものように、片方の口角を上げて皮肉を返してくる。
(私、助けられてばっかだね。出会いもそうだったし…)
情けなくなってへらりと笑う。
思い返すと、シルバーくんは言葉で突き放しても、結局最後には必ず救ってくれた。今まで何度そうして支えられてきたんだろう。
借りを返すと言っても私は何ができるかな。
ぼんやり考えながら見上げれば、至近距離でシルバーくんも私を見つめていた。
いつものようにすぐ逸らされるかと思ったのに、目が合ったまま時が流れる。
なんとなく気まずくて、話を振ってみた。
(…そうだっ!またグリーンと一緒に修行する?頼んでおくよ)
これなら喜ぶと思った。けれど、シルバーくんの顔から笑みが消える。
シルバーくんは、無言で私の頭の後ろに添えていた手を抜く。そのまま立ち上がるのかと思いきや、両手の指と指を絡ませてきた。