• テキストサイズ

【ポケモン】パシオで恋して

第10章 親子のカタチ



Nが気がかりで気持ちが晴れぬまま、シルバーくんと特訓を終えて夜道を帰っていると、海岸のはずれで誰かと話しているNを見つけた。

ひとりでゲーチスの元へ向かったんじゃないかと心配していたので、ホッと胸を撫で下ろす。

「えぬ——むぐっ!?」

声をかけようとした瞬間、シルバーくんに手で口を塞がれ、そのままずるずるとNの死角にある茂みへと連れて行かれる。

(おい、頼むから少しは空気を読め…!)

(ゴメン…)

しゃがんで息を潜めながら、Nの様子をうかがう。隣にいる人が誰かわかるかシルバーくんに尋ねると、イッシュの元チャンピオンであるアデクさんだと教えてくれた。

盗み聞きに若干の罪悪感を抱きつつ、会話に耳を傾ける。

「——…お前さんには悪いが正直に言おう。きっと罠だ。それほど、ゲーチスは邪悪な男だ」

Nは何も答えない。

「だが、わしにもヤンチャ坊主のバンジロウという孫がおる。もしあやつが悪の道に進んだとして、信じてくれと言われれば、わしもお前さんと同じように悩むだろう」

アデクさんは、Nとゲーチスの関係性をよく知っているらしい。言葉の一つひとつに芯があり、強い説得力を感じる。

「理屈ではなく、心で繋がる、それが家族というものだ。どんな悪逆非道な者とて、お前さんにとってゲーチスは家族であり、たったひとりの父親なんだろう」

「家族…父親…」

(…綺麗事言いやがって。苦労するのはいつもこっちなのに)

それまで黙っていたシルバーくんが文句を言っている。

サカキを父に持つシルバーくんも、きっと相当苦労したんだろう。だからこそ、シルバーくんもNをほっておけないんだ。


/ 452ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp