第10章 親子のカタチ
「行かせてやれ」
「でもっ」
「友達なんだろ!お前にとってNは!」
「…っ!」
強い口調でそう言われ、言葉を失う。
「……なら、信じて待ってろ」
なにが友達だ。上部だけじゃないか。
Nはあんなに心を見せてくれたのに、私には待つことしかできない。何もしてあげられない。
「お前……っ、またそうやって…!」
友達が辛い時に何もできない無力感に、涙がひとりでに滲む。
そんな私を見て、シルバーくんが苛立った顔つきになる。
「〜〜〜っ!あぁもうっ!ほんっっとに泣き虫だな!」
そう吐き捨てると、片手で私の背中をそっと抱き寄せた。
突然のことに胸がざわつく。
「っ…シルバー…くん…!?」
「うるさい、黙ってろ」
冷たく突き放しながらも包み込んでくれる。そんな不器用な優しさに、身も心も寄り添われているような心地になった。
シルバーくんの鼓動をすぐ側で感じ、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
きっとNも、こんな風にぬくもりが欲しかっただけなんじゃないだろうか。
こうやって、辛い時、寂しい時にただ抱きしめてほしかっただけ。
神様がいるなら叶えてよ。Nのささやかな願いを……。
「……泣き止んだら修行するぞ。本戦まで時間がない」
「うん…ごめん、ごめんね…」
シルバーくんの優しさに包まれながら、子供のように泣きじゃくった。