第10章 親子のカタチ
「頭の整理ができないからそうやって意見を求める。ポケモンのことはなりふり構わず自分の正義を貫こうとするのに、自分のことは自分で考えられないのか?」
「ねぇ、そんな言い方しなくても…!」
「いいんだ。シルバーの言う通りだよ」
Nは思いを馳せるように、遠い空の向こうを仰いだ。
「パシオに来て、たくさんの優しいヒトたちに出会った。親子、兄弟、トモダチ——人間は様々な関係性を構築し、互いに影響を及ぼし合う。そんな彼らを見て、少し、憧れてしまったんだ」
空の向こうでは分厚い雲が太陽を覆い、エメラルドの瞳に翳りが生じる。
「親子というものを、ボクは……」
不意に、Nはゼクロムを呼んだ。
「すまない、少し考える時間がほしい」
「N…?」
Nはそっとゼクロムの背中に乗る。
「迷惑はかけない、必ず戻るよ」
「そんな…っ、待って…!」
「ちゃんと考えたいんだ、答えを出すために…」
追いかけようとした私の腕を、シルバーくんが掴んで引き留める。Nは私たちを一瞥すると、儚げに微笑んで飛び立ってしまった。