第10章 親子のカタチ
「いいのか?」
険しい目つきで、シルバーくん。
「ああ…」
躊躇いがちに返事をするNは、感情をひた隠しにしているように見える。そんなNの複雑な心境を想像するだけで、やるせない気持ちが込み上げてくる。
悲しみの深さ、苦悩は想像を絶する。どれだけひどい裏切りを受けたとしても、「親」という存在はきっと特別なのだろう。
何年も前に裏切った親が、何の保証もなく急に手を差し伸べてきたら——。
私がNの立場ならどう思うだろうか。
「Nはこれからどうしたいの?」
N自身に答えを委ねる質問を投げかけてみる。
少し考え込んでから、Nはぽつりと言った。
「……わからない」
いつも理知的で瞬時に状況を分析するNが、今はまるで迷子のよう。私には、孤独を抱えた小さな子供のように映った。
「ナナはさっきの言葉どう思う?ボクと本当の親子になりたいって……」
「私は……」
プラズマ団の、いや、ゲーチスの数々の悪行を思い返せば、罠である可能性は極めて高い。でも、Nの気持ちを考えると、それをどうやって言葉にして伝えればいいのかわからず口ごもる。
「プラズマ団の王だった男が、随分と優柔不断なんだな」
沈黙を切り裂くように、シルバーくんが皮肉まじりに口角をあげて言い放った。