第10章 親子のカタチ
「そこにいるのはもしや…!」
低い声が背後から響いた。Nは顔を強張らせながら声の方をじっと睨みつける。
まさかと思い、恐る恐る振り返った。
「おぉ…N!Nではないですか!ゼクロムらしきポケモンを見かけたから姿を追ったら、まさかこんなところで会えるとは…!」
Nよりも背の高い男性が、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。不気味な柄の漆黒のマント、片目を覆う眼帯、派手なエンブレムをあしらった杖——威厳や落ち着きがありつつも、どこか異質で得体の知れない存在感のある初老の男性。
「やはり来ていたんですね」
名を聞かなくても、Nの態度でわかる。きっと、この人がプラズマ団のゲーチスだ。
「こんなところであなたと再会するなんて…!」
「ボクも、思ってもみなかった」
男の人は、Nの隣にいる私には目もくれない。興味がなさすぎて視界に入らないんだろう。
(おい)
(シルバーくん!?)
いつのまにかシルバーくんが私の隣にいて、ゲーチスに聞こえないよう耳打ちしてきた。
(見かけたから後をつけてた。あれがゲーチスだろ?)
目配せしながら頷く。張り詰めた空気の中、私とシルバーくんはNとゲーチスのやり取りを見守る。
ポケモンをかたわらに待機させ、何かあればすぐ動けるよう、私達は警戒を解かずにその場に立っていた。