• テキストサイズ

【ポケモン】パシオで恋して

第10章 親子のカタチ


私を襲ったブレイク団や、ポケモンを実験に利用したロケット団は確かに非情で許せない。けれど、善悪はそう単純に切り分けられるものではない。

「確かにブレイク団やロケット団はポケモンを使って悪いことをするし、私だってそれを阻止したい。でも、全員が全員、道具とは思っていないかもですよ」

Nは納得がいかないのか、顔を曇らせて話の続きを待つ。

「ええと、決して悪い人たちを庇うつもりはないんだけど、グレン島でかじばどろぼうとポケモン勝負したことがあって。泥棒って悪いことだけど、勝負は真剣だったし、ポケモンともとっても仲良さそうで、それ見たらなんだか憎みきれなくて……」

説明が下手なうえ、タメ口も慣れなくて、頭の回転が速いNにうまく考えを伝えられているのかまるで自信がない。

「つまり、何が言いたいかというと、悪人を真っ向から否定するんじゃなく、そうなった経緯もできるだけ理解しようと思うし、でもやっぱり悪事は許せなくて……ええと、なんとなく言いたいことは伝わったでしょうか?」

顔色を伺うようにNをチラ見すると、Nは虚ろな目で何やらぶつぶつと独り言をこぼしている。

「そうだ…ボクは灰色の世界を見てきたんだ…多くの出会いを経て、複雑なこの世界を——」

すると突然、私の両手を掴んできた。大きな手に包み込まれ心臓が跳ねる。

「キミの言う通りだ!」

「なにが!?」

「この世界は歪で、複雑で、簡単に二極化できない。ポケモンとヒトは互いを必要とするから出会い、異なる考えを受け入れ化学反応を起こす。だからこそこの世界は美しいんだ…!」

Nの目に生気が戻り、声に熱がこもる。きれいな顔がものすごく近い。きらめく瞳が眩しい。

/ 452ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp