第10章 親子のカタチ
Nは意外とおしゃべりで、話し出すと止まらない。ぽんぽんと質問を投げかけては、話しながら自分なりに分析して答えを導き出そうとする。その様子は、まるで長い数式を組み立てていく数学者のようだった。
「キミ、6匹のポケモンがいると言っていたよね?ぜひそのポケモンたちの声を聞かせてくれないか?」
「いいですよ、じゃなくて…いいよ!捜索終わったらみんなを紹介するね」
「アリガトウ!楽しみにしてるよ」
「うん!」
と話していたら、早速カモネギが帰ってきた。
「カモッ!」
その後ろにはゼクロムも続いている。ちっちゃなうちの子を守るようについてきているゼクロム。Nみたいに優しいポケモンだ。
「おかえりなさい!どうだった?」
カモネギはちょっとしょんぼりした顔を見せる。見つけたから呼びにきたのではなく、いなかったから戻ってきたようだ。
「そっか、じゃあそろそろ切り上げようか」
地上に降りてきたカモネギの頭をヨシヨシしていると、サンダースも戻ってきた。撫でてほしいのか、私の膝に頬擦りしてくる。
「うん、サンダースもありがとう」
毛並みを撫でて静電気で髪が逆立つ私の隣で、Nもゼクロムを労うように、漆黒のボディを撫でている。
「世界中のトレーナーが、キミのようにラブに溢れていたらよかったのに」
そう呟くNの表情は、笑っているのにどこか寂しげだった。
「ほとんどのトレーナーは、みんなラブいっぱいなのでは?」
「いいや、ポケモンの気持ちを考えず、道具のように扱うヒトをたくさん見てきたんだ。この間のロケット団だって、苦しむポケモンをダイマックスの実験に…」
Nは悔しそうに目を伏せて歯噛みする。