第10章 親子のカタチ
「そうだ。ナナにひとつ頼みがある」
「なんですか?」
「ボクのことを呼び捨てにしてほしいんだ」
「え」
急なお願いに一瞬思考が止まる。
「あと、敬語もやめてほしい」
「ええと、特に意識はしてなかったんですが、ど、どうしてですか?」
大人である彼に敬語を使うのは、仲良くしてもらってるとはいえ最低限の礼儀だと思っていた。
「シルバーみたいにボクも仲間、いや、トモダチとして同じ目線で話したいんだ」
「友達…」
「嫌かい?」
本人がそう言うのならいいのかな。呼び捨てにしても、敬語をやめても。
少し緊張するけど、私を「友達」と言ってくれたNさんの気持ちに応えるのであれば…!
「嬉しいです…じゃなくて、嬉しい!じゃあこれからは敬語はやめま…やめるね」
すう、と深呼吸してから名前を呼ぶ。
「よろしくね、N」
うわぁ、やっぱり慣れない。
けれどNは、照れる私とは対照的に、嬉しそうにニコリとする。
「うん、ヨロシク。ナナ」
口調を変えて挨拶を交わす。それだけでなんだか新鮮で、くすぐったい気持ちになった。