第10章 親子のカタチ
「そういえば、昨日話していたお友達はイッシュにいるんですか?」
「パシオに来ているよ。ボクも数年ぶりに会えたばかりなんだ」
「へえ…!なんだか運命みたいですね」
「ああ。世界中を旅してたどり着いたのがパシオだった。そしてこの地でトウヤと再会できたんだ」
嬉しそうに目を細めるNさんの姿に、私も幼馴染3人とパシオで再会した日を思い出した。
世界中からトレーナーが集まるパシオは、出会いや別れが交差し、それぞれの物語が生まれる場所。きっと、私たちのようなドラマがこの島のあちこちで繰り広げられているのだろう。
誰もが夢や目標を持ってこの島に訪れる。でも、その真っ直ぐな気持ちを、悪意で踏みにじろうとする者がいる。
強くなりたいという気持ち、夢を叶えたい想い——そんな純粋な願いを悪の思想で蝕もうとする者が。
「ボクはパシオが好きだ。トウヤに巡り合わせてくれて、ポケモンとヒトのきずなを見せてくれるこの場所が。だから守りたい、守るために戦いたい」
「それに」と付け加えて、続ける。
「ナナやシルバーにも会えたからね。キミたちのおかげで毎日がとても楽しい。知らないことや新たな発見がたくさんなんだ」
Nさんって、どうしてこんなにピュアでストレートなのだろう。
「私もっ、パシオを守りたいです!」
パシオを守ることがNさんを笑顔にするのなら、怖くても立ち向かおう。
そんな決意を胸に抱き、Nさんとたわいない話を交わした。
話していると時間の経つのはあっという間で、気づけば湖の周りをぐるりと一周していた。
修行中のトレーナーはちらほら見かけたものの、やはりゲーチスは簡単には姿を見せない。