第10章 親子のカタチ
「Nさんは確かに変わってるけど、それは誰よりも優しくてポケモンの痛みがわかるからです。バケモノなんかじゃありません」
優しい人が苦しむ世界なんてまっぴらだ。Nさんは今までどんな悲しい思いをしてきたんだろう。そう考えたら思わず泣きそうになり、堪えようと唇を固く結んだ。
「ナナ……泣いてるの?」
「な、泣いてません!正確には泣きそうになって堪えてるので、これ以上優しい言葉をかけないでください!」
キョトンとするNさん。
「優しい言葉なんてボクは何も言っていない。優しいのは、ボクの心に寄り添ってくれるキミなんじゃないか?」
「く、うう〜…」
ダメだった。Nさんは、その存在だけで私の涙腺を破壊する。
「ナナ?」
Nさんが驚いた様子で私の顔を覗き込む。自分でも泣き虫すぎて恥ずかしくなってきた。
袖で涙をゴシゴシ拭う。
「ごめんなさい、気にしないでください。グリーンやシルバーくんにもすぐ泣くからからかわれるし、私こそ泣き虫のケダモノです」
「ナナはケダモノじゃない」
真剣な顔で返してくるから、拍子抜けして吹き出してしまった。
「ふふっ、じゃあ、お互いバケモノでもケダモノでもないですね!」
「アハハッ、そうかもしれない」
Nさんも一緒に笑顔になったので安堵する。
Nさんにはいっぱい悲しい思いをした分、これからはたくさん笑って過ごせるようになってほしい。
「キュイ!」
歩きながら話している私たちのもとに、サンダースが駆け足で戻ってきた。
「おかえり、見つかった?」
「ダー…」
「いないって言ってる……で、合ってます?Nさん」
「うん。向こうにはいなかったから別の場所を探してって言ってるね。あっちの湖を見てみようか」
「はい!」
サンダースの声をなんとなくわかったのが嬉しくて、内心ウキウキしながら湖へと向かう。サンダースは先導するように、張り切って先を進んでいる。