第9章 ※チームメイト
「シルバーくん…」
きっと、私はこの時初めてシルバーくんの本心を聞いた。普段自分のことを明かさない彼のまっすぐな言葉を。
シルバーくんの背中に、どう言葉を返せばいいのか言い淀む。
いつもそう。言葉を探して考え込んで、結局言えずじまいで終わってしまう。
シルバーくんの言う通り、私はふたりに比べたら何もない普通の家で育った。家に帰ればおかあさんがいて、あったかいごはんもあるし、太陽の匂いがするフカフカなお布団も出迎えてくれた。
そんな私が何か伝えても、上っ面のありふれた言葉にしかならない。
歯痒さと不甲斐いなさに俯いていると、隣にいたNさんが沈黙を破った。
「話してくれてアリガトウ、シルバー」
シルバーくんは私たちから視線を逸らしたまま、やや苛立ったように鼻で息をつく。
「フン、話の流れで言ったまでだ」
「キミもいろいろと、複雑な事情があるみたいだね」
私では、ふたりが抱えた心の傷を100%理解してあげられないし、その苦悩は想像しかできない。過去に戻って少年時代の彼らを救うこともできない。
「軽はずみに聞いて…ごめん」
「謝らなくていい。話したくなきゃ黙ってるさ。キミもそうだろ?シルバー」
「ああ、警察だなんだに散々聞かれまくって、こっちはもう慣れっこなんだよ」
「ほら、シルバーはナナに自己開示をしたかったんだって」
「だからっ、話の流れだって言ってるだろ!」
Nさんの言葉が気に入らなかったのか、シルバーくんは語尾を強めて否定する。そんなシルバーくんを見て、Nさんは穏やかに微笑んだ。
ふたりが「今」望むものはなんだろう?私でも何か力になれないだろうか。
そもそも私の力なんか必要ないかもしれないし、私では役不足かもしれない。
でも、せっかくこうして会えたんだ。ひとりで困っていた私を助けてくれたんだ。そんなふたりに何かしたいと思ったっていいじゃないか。