第9章 ※チームメイト
その名を口にするのを一瞬ためらいつつ、思い切って聞いてみる。
「シルバーくん、ジムリーダーがサカキだったこと知ってるの?」
「ああ」
「もしかして、ジョウトだと思ってたけどカントー出身?」
「トキワシティだ」
「え!?」
ヒビキくんたちはジョウトと言っていたから、てっきりシルバーくんも同じだと思っていた。
「私よくトキワシティ遊び行ってたよ!ってことは実は会ったことあるのかな?トキワの森とかで!」
「さあな」
「さあなって…」
虚空を見つめたまま、シルバーくんはほんのわずかだけ眉をひそめる。
「8歳の頃、オヤジが突然いなくなってからすぐに、オレもトキワシティを離れたからな」
「突然いなくなったって…そんな…っ」
胸の奥を抉られたような心地だ。
壮絶な過去をまるで当たり前のように淡々と語るシルバーくんの姿が、余計に私の中の悲しみを増長させる。
急に親がいなくなるなんて平気なわけがない。辛かったはずだ。
それなのに、シルバーくんは全てを悟ったかのように落ち着いていて、私よりずっと大人びて見えた。
「シルバー、キミは……」
Nさんも、それ以上は言葉にせず口ごもる。
会話の中に垣間見える真実。
年齢的に逆算しても、ロケット団の壊滅・ジムリーダー失踪と、シルバーくんの父親をどうしても重ねてしまう。