第9章 ※チームメイト
「こちらこそ、話してくれてありがとうございます。でも……ごめんなさい。何にも考えずに質問しちゃって…」
「いいんだ。キミにはボクの過去も知ってもらいたかったから」
「なぜ…ですか?」
「ナナに素性を何も話さずチームメイトでいることが、不誠実な気がしたんだ。それに、キミになら話したいって思ってね」
とNさんが言ったタイミングで、サンダースがトコトコとこちらへ近づいてきた。サンダースはNさんが少し気になるようだ。
Nさんがそっと手を伸ばすと、サンダースは耳を揺らしながら、Nさんの指先に鼻をちょんとつけて匂いをかいでいる。
「すごいです!この子おくびょうなのに、即Nさんに懐いちゃった」
「そうなのかい?今、とてもリラックスしているみたいだね」
サンダースと目が合うと、Nさんはふわりと微笑んだ。
「世界中を旅してたくさんのトレーナーを見てきたけど、こんなに信頼し合っているバディーズは珍しい。このトモダチは、キミを家族であり親友だと思っている。キミのために戦いたい、守りたいって強く願っているみたいだよ」
「キュイ!」
「…ダーちゃあんっ!」
「泣くなよすぐに…」
シルバーくんが呆れている横で、涙と共に愛しさが溢れてサンダースを抱きしめると、静電気で髪がブワってなってNさんが声をあげて笑った。
「パシオには、種族や思想を超えて繋がる、キミたちみたいなバディーズがたくさんいる。ここは、ボクが追い求めていた白と黒の融合、人工と自然が混ざり合った理想郷…!」
Nさんは立ち上がると、両手を広げて空を仰いだ。
「この島では誰もがポケモンをボールから出し、ヒトとポケモンは信頼で結ばれ、自由に過ごしている!ボクはそんなパシオがダイスキなんだ!だからもう少しこの島で夢を見ていたい。知りたいんだ、ボクが描く理想は実現できるのか、このパシオで…——!」
熱く夢を語るNさんの口からは、言葉が途切れずに次から次へと溢れ出す。
熱に浮かされたように話すNさんを見ていると、彼が信じる世界のかたちが、ほんの少しだけ私にも見えた気がした。