第9章 ※チームメイト
「随分と話が逸れてしまったね。ナナの問いに戻ろう。もうわかると思うけど、ボクには幼馴染はいないんだ。ポケモンのトモダチはたくさんいたけどね」
Nさんは「でも」と付け加え、ひと呼吸置いてから嬉しそうに目を細めた。
「ボクに大切なことを気づかせてくれたトモダチはいるよ。ヒトとポケモンのスバラシイ関係を教えてくれて、ボクの未来を変えたトモダチが…!」
「じゃあ、その人と出会ったからプラズマ団を抜けたんですか?」
Nさんは、過去に想いを馳せるように遠くの空を見つめる。
「うん…!狭い世界で生きていたボクを救ってくれたんだ」
そう言うと目を閉じて、記憶の宝箱から大切に取り出すように、その友達の名前を口にした。
「……トウヤって言うんだ。いつかキミに会わせたいな」
「はい…!ぜひ!」
泣くのを堪えて笑顔で返す。辛い過去を背負うNさんを、救い出してくれた存在がいるというのが何よりも嬉しかった。
「長くなったけど、ボクの話はこれでオシマイ。聞いてくれてアリガトウ…!」
重く悲しい過去の話を、Nさんは笑顔で締めくくった。
Nさんは、歳上なのに子供のように純粋で、誰よりも優しくて——そして時折、守ってあげたくなるような寂しさを見せる。
そんな、不思議な人だ。