第9章 ※チームメイト
「……この間、研究所で話していたことは本当だったんですね」
Nさんは帽子のツバを掴んで頷いた。
「でも、あんたはポケモンを守りたかっただけだろ」
シルバーくんが腕を組んだまま、視線をNさんに投げる。
「そりゃあ小さい頃から、虐待されて奴隷のように扱われたポケモンばかり見せられたら、そうなるのも仕方ない」
シルバーくんの言う通りだ。私だって同じ境遇で育ったら、人間不信になってしまうだろう。
「それに、プラズマ団を実際に動かしていたのは幹部だったゲーチスだ。あいつは、あんたを王として祭り上げ、裏では自分ひとりが世界を支配しようと企んでいた。あんたはゲーチスに利用されていたにすぎない」
その言葉に、Nさんは俯いてしまった。静寂が数秒だけ流れ、ゆっくりと視線を私に移す。
「けれどそれはボクの都合であり、ポケモンを慕う優しいヒトたちに迷惑をかけたのも事実なんだ」
自分を責めるNさんに思わず反論する。
「そんなの…Nさんが悪いわけないじゃないですか…!騙されて利用されていたってことですよね!」
「それでも、ボクはボクのすべきことをして償っていくつもりだ。だからロケット団のことも手伝いたいと思ったんだ」
イッシュを混乱に陥れたプラズマ団の大事件。その全てを企んだのは幹部であるゲーチス…。
Nさんが歩いてきた道は、想像を絶するほど過酷だった。
彼が背負ってきた苦悩や重圧は、どれほどのものだったのだろう。
考えただけで心が引き裂かれそうになる。