第9章 ※チームメイト
氷河エリアは寒すぎるので、いったん草原に戻って3人で反省会兼作戦会議を始める。
それぞれの傍らにはバディを連れている。私はいつものサンダース、シルバーくんはホウオウ、Nさんはゾロアーク。
ちなみに、属性や連携をどうするか話し合った結果、この編成でエントリーすることになった。
会議を始めた私たちのそばで、ポケモンたちは自由に過ごしている。
「気に入らない。勝ちは勝ちだろ。なんであのじーさんバッジをよこさないんだよ」
歯噛みしながら、シルバーくんが吐き捨てる。
「勝ちは絶対条件じゃなく、リーダーに認められないとバッジをもらえないって本当だったんだね」
「結果が全てだろ。あいつよりオレたちの方が強かった」
「でも途中、私にはヤナギさんが本気じゃないように見えた…」
ぽつりと呟くと、シルバーくんはぴたりと黙り込んだ。
順調だったはずのバッジ集め。まさか最後の5つ目でこんなことになるなんて思いもしなかった。
「私たちにたりなかったものってなんだろう?」
しばらくポケモンたちを嬉しそうに眺めていたNさんが、私の方へ振り向いた。
「ポケモンとの信頼、きずなはみんなある。それに、攻撃だってそれぞれの持ち味を出せていた。となるとやはり、彼はポケモンではなく、ボクらに何か課題を見出したんだろうね」
そう言われて、ヤナギさんの言葉が脳裏に蘇る。
「『力だけに頼っていては、この先キミたちは容赦なく壁にぶち当たる』って言ってたよね」
メイちゃんのまねで私もものまねに初挑戦——したけど、見事に滑った。
ふたりの視線が痛い。
「似てない」
「……なるほど、声を似せて彼のキモチに近づこうとしたんだね。クオリティはどうであれ、解を求めるその意欲はすばらしい!」
純粋な気持ちで、ものまねの“解”に辿り着こうとしてくれているNさんに、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
「いやあの、深い意味はないです」
「そうなのかい?」
「この空気、責任取れよ」
「うぅ、場を和ませようとしただけなのに…」
タジタジな私を見て、Nさんが口元に手を添えてクスリと微笑んだ。