第8章 でこぼこトリオ結成
私たちの背後、研究所の入口にひっそりと佇むNさんに気づき、ワタルさんが声をかけた。
「Nくんじゃないか。博士に用事があって来たのかい?」
「実は調査中にNさんに会って、私たちに協力してくれたんです」
と、私から切り出し、なぜNさんがこの場にいるのか、どういった流れで研究所に来たのかをみんなに説明した。話し終えると、室内が一瞬静まり返り、Nさんに全員の視線が自然と向かった。
「もしロケット団によって、トモダチが苦しめられているのだとしたら、ボクはそれを阻止する…!」
悲しみと怒りを混ぜたような複雑な表情で、Nさんは決意を言葉にする。
「ヒトとポケモンの架け橋になる、その解はまだ出ていない。だからこそボクは、この無限の可能性を秘めたパシオで確かめたいんだ」
「N…あなた…」
「なら、オレらに協力してくれねーか?」
「……!」
グリーンがNさんへ提案を持ちかけると、後押しするようにレッドが頷いた。するとなぜか、Nさんの表情に翳りが生じる。顔を隠すように、帽子のツバを掴んで俯いた。
「だけどボクは、以前たくさんのヒトに迷惑をかけた。プラズマ団の王として、ジムリーダーやチャンピオンを避難し、否定して…。そんなボクを快く思わないヒトだって大勢いるはずだ。だのになぜ協力を持ちかける?」
「それはオレを試してんのか?イッシュのあの騒動について、オレは事情を詳しくは知らねぇ。けど、Nがポケモンを何よりも大切に思っているのは伝わってるぜ」
「ああ。少なくとも、ここにいる誰もがキミをそんな風に思ってはいないさ」
イッシュ地方のプラズマ団といえば、過去に大事件があったけど、Nさんがそれに関与している?みんな平然と話しているけど、Nさんがプラズマ団の王?誰もそれを触れも否定もしないということは事実なの?
ええと、確か当時のニュースでは、主犯格はたしか幹部の……なんて名前だったっけ?
ふと、Nさんと目が合う。エメラルドのような深い緑がどこか寂しそうに揺らめいた。
「Nさん…過去に何があったのか私は分からないけど…」
今、私の瞳に映るNさんは、とても純粋に、まっすぐな気持ちでポケモンの幸せを願っている、そう感じた気持ちは揺るがない。
「私もNさんと気持ちは同じです。一緒にパシオとポケモンを守りましょう!」