第8章 でこぼこトリオ結成
私の視線に気づき、ワタルさんがこちらへ向き直る。
「ああ、紹介が遅れたね。オレはワタル。マサラタウン出身と聞いているから、もしかしたらオレのことも知ってるかな?」
「も、もも、もちろんです!ドラゴン使いのワタルさんですよね!小さい頃からテレビでポケモンリーグ見てました!」
「ありがとう。ええと名前は確か…」
「あ、あの、ナナです!」
緊張で声が上ずり、言葉に詰まりながらも自己紹介すると、ワタルさんは白い歯を見せてニッコリ笑った。その横で、グリーンがニヤニヤしながらこちらを見ているのが目に入った。緊張する私を見て楽しんでいる。相変わらず趣味が悪い。
ワタルさんはシルバーくんの姿を見て、嬉しそうに笑う。
「キミも彼女と一緒にヒナギク博士の手伝いをしていたんだね」
「あんたにはカンケーない」
「ちょと!こら。ワタルさんに向かって失礼でしょ」
「あっはは、いいんだナナちゃん。オレとシルバーくんは古い付き合いなんでね」
「そうだったんですか…!」
ワタルさんと知り合いだなんて、強いとは思ってたけど、やはりシルバーくんもジョウトで名を馳せているトレーナーなんだろう。
「…じゃあ、親しいからこそのツンツン?」
「勝手に言ってろ」
研究所についてから、シルバーくんはいつにも増して不機嫌だ。会話を避けているのが態度に滲み出ているし、いつものツンツンもワタルさんに対してはより一層磨きがかかっている。
「でも親しくても礼儀があるでしょ」
「何も知らないくせにオレに指図するな」
「そうやってまたツンツンして」
「しつこいな」
シルバーくんと不毛なやり取りをしていると、背後からクスクスと控えめな笑い声が聞こえてきた。
「キミたちは賑やかで楽しいね」
「「どこが!」」
声が重なり、慌てて口を閉じる。