第8章 でこぼこトリオ結成
男の人がポケモンの背から静かに降り、こちらへと歩み寄ってくる。
「手間かけたな、N」
「やぁ、シルバー」
「シルバーくん、知り合いだったの?」
「ああ」
ふたりの関係を尋ねると、最近パシオで知り合ったばかりだという。アデクさんという人に稽古をつけてもらった時、たまたま一緒だったらしい。
それにしても綺麗な人だなぁ。
“エヌ”というのは恐らくイニシャルだろう。呼び名がイニシャルなんて、もしかすると有名人なのかもしれない。
男の人は、モデルなんじゃないかと思うほど脚が長い。しかも、見上げるほど高身長。新緑を思わせる長い緑髪を後ろでひとつに束ね、つばのある帽子を被っている。掴みどころがなく、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせている。
連れているポケモンは、黒曜石のように滑らかな黒い体をしていた。太い尻尾の内部からは青白い光が脈打つように漏れ、低く唸って空気を震わせている。威厳と風格があり、まるで神話の世界から飛び出してきたような存在感だ。先ほどの稲妻はすさまじい威力だったし、強さも圧倒的。恐らく、ホウオウと同じく伝説のポケモンだろう。