第3章 Ever green!②
ニコニコ笑顔でリーフちゃんが近づいてきた。その後にはレッドの姿。
「リーフちゃん!レッド!」
ふたりに向かい、ぶんぶん手を振る。
「ボンジュールおふたりさん!今日の優勝はいただくぜ!」
「こっちこそ負けないから!ねっ、レッド!」
「……!」
レッドは相変わらず無口のまま微笑んでいるけど、その笑顔から、勝負前の気迫が伝わってくる。
ポケモンリーグの頂点を極めたレッドは、なんというか、伝説のポケモンみたいなオーラを身に纏っている。
一目見ただけで圧倒される、絶対的王者のオーラだ。
「……?」
レッドの瞳が私に語りかけてきた。
不思議だけど、レッドに見つめられると言葉はなくても気持ちが伝わってくる。
「えっと、私がいつもと違うけど大丈夫?って」
こくりと頷くレッド。
「ありがとうレッド。心配しないで。みんなに会ったら緊張がなくなったから」
「…!」
よかった!と言っている。たぶんだけど。
「レッドってば、ずっとナナちゃんのことばっか気にかけてるんだよ。パシオに来たばかりで初めての大会でしょ?いつまでもおにーちゃん気分なの」
リーフちゃんの言葉に、レッドは恥ずかしそうに帽子を目深に被った。
「あははっ、頼りになるおにいちゃんがいて嬉しい!」
「もちろん!困ったことがあったらいつでもあたしも頼ってね!」
「ありがとうリーフちゃん!」
そうは言ったけど、私にとって3人全員頼りになるおにいちゃんとおねえちゃんである。
だけど、今日はレッドとリーフちゃんとは敵同士。
頼りになる分強力な、ううん、きっと最強のライバルだ。
このふたりは間違いなく優勝候補だろう。
昨日の特訓では、このふたりとのタッグバトルをシミュレーションしながらグリーンと対策を練ったし。
レッドとリーフちゃんが連れているポケモンはリザードンとフシギバナ。
グリーンの予想通りのバディだ。
もし戦うことになったら、昨日の特訓が活かせますように!
「……」
笑顔のレッドと目が合ったので私も微笑み返す。
そんな私とレッドの間に、グリーンが遮るように立ち塞いだ。