第2章 Ever green!①
「びっくりした!急に立たないで!」
「ハハハッ!」
なんだかすごく上機嫌。
グリーンはただの悪ふざけのつもりだろうけれど、こっちはさっきからドキドキしっぱなしだ。
手を離そうとすると引き寄せられ、そのまま腕の中に閉じ込められた。
「グリーン…!」
「また勝手に逃げられたら困るからな」
こんな至近距離で会話をするのは初めてだ。
至近距離というか、密着している。
きっと、私の煩いくらいの心臓の鼓動はバレてしまっているだろう。
「おくびょうなヤツはよ、すばやさが高いから逃げないようしっかり懐かせないとな」
「私はポケモンじゃない」
冗談混じりに笑うその表情はどこか優しい。
硬派なレッドと違って、グリーンは調子いいところあるから、異性とこういうことするの全然抵抗ないのだろうか。可愛い子見かけると口説いたりしていたとかリーフちゃんが言っていたし。
グリーンにとっては挨拶程度かもしれないけれど、耐性のない私にはまるで劇薬だ。
こんなことされたら、意識せずにはいられない。
幼馴染としてではなく、1人の異性として、ますます好きになってしまう。
腕の中、鼓動が重なる。
心拍数上昇しっぱなしの私と、グリーンの落ち着いた……あれ?
グリーンも……?
「やべ、こんなことしてたら夜になっちまう」
唐突に腕から解放され、慌てて身体を離す。
心臓がバクバクして顔から湯気が出そうだ。
「続きは明後日優勝してから、な?」
「つ、つづき!?」
つつつつつづきとは一体!?
グリーンは涼しい顔で潮風に髪をなびかせている。
一方の私はというと、完全にグリーンのペースにのまれている。
ダメだ。「つづき」を考えていると頭がおかしくなりそうだ。
落ち着け、私の心臓。
まずは大会のことを第一優先。
私が呼吸を整えていると、その横でグリーンは沈みゆく夕日を眺めながら、「そういえば」と呟いた。