第6章 予選、野望、そして仲間
勝負を終えた砂浜にはさざなみの音だけが響いている。
深いダメージを負ったホウオウに寄り添う男の子にげんきのかたまりを差し出すと、男の子はブスッとしながらも受け取った。
「……もらえるもんはもらっとく。言っとくが、お返しなんか期待するなよ」
先にもらったのは私だもん、と胸中で呟いた。これで貸し借りはゼロだ。
男の子はホウオウの手当てを終え、モンスターボールへと戻した。私もサンダースの傷を回復させ、ボールに戻してゆっくり寝かせてあげることにした。それくらい、互いのポケモンは満身創痍だった。
「クソッ、あの時回復しないで先制攻撃を仕掛けられれば…!」
「引き分けだったね」
バディーズわざがぶつかり合い、相打ちに。どちらもノックアウトで勝負はあっけなく終わった。
「こんな弱そうなヤツひとり倒せないなんて。オレは今まで何をしてたんだ…!」
拳を握り締め、悔しそうに歯噛みして、その場に立ち尽くしている。
「弱そう弱そうって!まぁ否定はしないけどさ」
ネガティブ思考に慣れているせいか、他人から"弱そう"と言われてもあまり気にならないのは、もしかしたらネガティブのポジティブ的要素かもしれない、なんてふと思っておかしくなってきた。
隣の男の子を見やると、まだ行き場のない感情を抱えたように目を伏せている。
「勝負してくれてありがとう。約束は勝ったら仲間だもんね。一緒に戦いたかったけどあきらめるよ」
と、手を差し出すけど、当然のように無視される。
「WPMでまたリベンジさせてね。絶対の絶対、大会で会おうね!」
男の子は俯いたまま口を閉ざす。私は、気まずさを笑顔でごまかして手を引っ込めた。
「…じゃあ」
迷いを残しながらもそっと背を向けると、背後からボソリと声がした。