第6章 予選、野望、そして仲間
「クソッ、ヒビキといい、なんでオレの周りはいつも図々しいヤツばっかなんだ…!」
背中を向け、何やらぶつくさ独り言をこぼしている。しばらく待っていると、こちらへ向き直り、ギロリと私を睨み据える。
「わかった。その誘い乗ってやる。明日、今日と同じ時間にここへ集合だ」
「えっ、いいの!?」
心の雲が晴れ、視界が澄み切った感覚…!
まだチームを組むと決まったわけじゃないのに、絶対断られると思っていたから、チャンスをくれたことが嬉しくてつい満面の笑みになってしまう。
「ありがとう!明日の12時にここね」
「覚悟しとけよ。ぶっ倒してやるから」
そう吐き捨てると、きびすを返し、何も言わずに去ってゆく。風に揺れる赤髪を見送りながら、ある重要なことを思い出した。
「ちょっと待って!おーい!」
去りゆく男の子の背中に向かい叫んだ。
「しつっこいな!」
心底嫌そうに振り返った男の子に歩み寄る。
「名前教えてなかったよね。私、ナナって言うんだ。キミの名前は?」
「さぁな」
「ひ、ひどい」
「……フン、明日オレに勝ったら教えてやるよ」
「やっぱりひどい」
視線を落としていじけていると、そんな私を見てゆるりと口角を上げた。
「じゃあな」
別れの台詞と共に、男の子はホウオウの背中に飛び乗り、すぐに見えなくなってしまった。
ホウオウが飛び立った空の向こうには、鮮やかな虹がかかっていたのだった。