第6章 予選、野望、そして仲間
「レッド、グリーン、リーフちゃんは、私にとって世界一強い3人なの」
男の子は何も言わずに私を睨む。緊張で声が震えるけど、気にしてなんかいられない。
「その3人を倒して、パシオの頂点に立つ!そ、それが!私の目標!」
「弱いくせに口だけは達者だな」
私の言葉にフッと笑みをこぼし、皮肉混じりに挑発的な視線を注いでくる。
「だから、私とチームを組んでほしい!」
「なっ!?」
と、今度は驚いた表情で動揺し始める。
「誰があんたみたいな口だけご立派な弱いヤツとなんか!」
そう言われるのも仕方ない。だって、さっき助けられたばかりだもん。
「なら、口だけじゃないって証明するチャンスをちょうだい!私とポケモン勝負して!私が勝ったらチームを組む。どうかな?」
男の子は押し黙ると、またそっぽを向いてしまう。
「……チームなんかまっぴらだ。オレはオレのやり方で強くなる」
「どうしてひとりにこだわるの?」
「あんたには関係ないだろ」
味方に足を引っ張られるのが嫌なのか、仲間同士で連携を取り合うのが面倒なのか。
思い返せば、ブレイク団に対しても、行った悪事よりも、複数でひとりを襲っていたことに対して怒っているように見えた。
だけど、強くなるためにパシオに来たというのなら、パシオにおける最強=WPMチャンピオンなのだから、興味がないはずがない。ならば、その思いを確かめてみる?
「どうしても嫌ならあきらめる。でも、キミも私と同じで、倒したい人が、目標があるからパシオに来たんじゃないの?」
私の問いかけに、男の子は口をつぐんだまま俯いた。しばしの沈黙の後、ムスッとした顔で渋々と口を開く。
「——…ライバルならいる。あと絶対ぶっ倒したいヤツも。そいつらを倒して最強の証明をしてやるって決めたんだ」
「なら、目的は私と同じだね」
「一緒にするな。オレは馴れ合いの関係なんていらない!オレはひとりでいいんだ」
グサグサグサと、言葉の棘がハートに刺さる。
「でも…」
どんなに否定したって私と彼は立場は同じ。どれだけ大義名分を掲げても、
「WPMはひとりじゃ出られないよ」
「っ!!」
核心をついた一言に、頑なに拒んでいた表情に揺らぎが見えた。