第6章 予選、野望、そして仲間
「ホウオウは、心正しきトレーナーの前に現れる……か」
ふと、男の子が呟く。
「心正しきトレーナー?」
そういえば、そんな言い伝えをジョウトを旅していた時に聞いたことがあったっけ。
「なら、キミは“心正しきトレーナー”なんだね。私のことも助けてくれたし」
「あんた、初対面の相手によくそんな恥ずかしいこと言えるな」
意地でもこちらを向きたくないと言った様子で、男の子は背を向けたまま返事をする。
「そっちが最初に言ったのに」
「オレじゃなく、あんたの前にホウオウが現れたことになにか理由があると思ったんだよ!」
「私は……」
先ほど芽生えた気持ちを思い出し、悔しさに拳を握り締めた。
「正しいとかよく分かんないけど、ブレイク団と戦っている時、悪いのはポケモンを悪用する人間なのに、なんでこの子達が傷付かなきゃいけないんだろうって思った。ひんしの子を巻き込みたくないって思ったら隙を突かれて、その後金縛りで動けなくなって…」
「それであんなに隙だらけだったのか」
私の腕の中、弱々しく呼吸をしているサンダースを見つめる。
「そのせいで、サンダースに重傷を負わせちゃった。私がしっかりしないとなのに、強くならないとなのに…」
サンダースを砂浜に寝かせて手当てをしようとリュックからキズぐすりを探していると、まんたんのくすりが手元に飛んできた。反射的にキャッチする。