第6章 予選、野望、そして仲間
「弱いくせに、群れて偉そうにしやがって」
声の主は、ゆっくりと砂を踏みしめながら近づき、ブレイク団から庇うように私の前に立つと歩みを止めた。
「オレはお前らみたいな、ひとりじゃ何もできない雑魚が大嫌いなんだ!」
戦闘不能になった3匹を一瞥し、怒りを宿した目をカッと見開く。
「目障りだ。オレの前から………消えろ!!」
「ヒィィィ!?」
「た、退散だ!」
「覚えてやがれ!」
悪役の典型的な捨て台詞を吐いて、ブレイク団は慌てて逃げて行った。
静寂を取り戻した海は、何事もなかったかのように穏やかだ。
助けてくれた男の子は海の向こうを眺めている。年齢はおそらく私と同い年か、歳の差があっても1〜2歳ぐらいだろう。長い癖っ毛の赤髪を潮風にたなびかせている。後ろ姿のため表情は分からない。
巨大な鳥ポケモンは、ブレイク団が逃げて行った方角を向いている。まるで、注意深く監視しているようにも見える。
あのポケモンは間違いない。図鑑でしか見たことがなかった伝説のポケモン、ホウオウだ。
傷を負ったサンダースを抱き、男の子に歩み寄る。
「あのっ」
声をかけても男の子は振り向かない。
「ありがとう…ございます」
「フン、べつに通りがかっただけだ」
そう言ってポケットに手を入れながら、静かな声で続ける。
「………ホウオウが、トレーニングしてたら急にいなくなって、追いかけたらあんたがいた」
「じゃあ、ホウオウがここへ……」
眩しさに目を細めながら空を見上げると、ホウオウが私たちを上空から静かに見守っているのが見えた。
「はじめて見た…本当に、きれい……」
その神秘的な存在感に、思わず感嘆の声を漏らした。