第6章 予選、野望、そして仲間
「ダー…?」
サンダースが心配そうにこちらを見上げている。私が落ち込んでいるのを察したのか、足元にくっつき寄り添ってくれた。触れた時、ビリッと感じる静電気にももう慣れた。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「キュウ」
「勝手にみんなと比べて落ち込んでるだけ。努力が自信になるくらいがんばればいいだけ」
という言葉が気に入らないのか、ふて腐れるように耳をぺたんとして前足に顎を乗せている。
「ごめんごめん。私にはサンダースがいるのにね」
そっと背中の毛を撫でると、静電気で髪の毛がブワッとなる。
「ふふ、今日も練習付き合ってくれてありがと」
そう伝え、頭を撫でていると、嬉しそうに耳を揺らした。
冒険のはじまりから連れ添ったこの子は、私にとって親友であり、家族であり、かけがえのない存在だ。パシオの大会に出場するポケモンは各試合ごとに1匹であり、当然、私はこの子をバディにしている。
「始まってもいないんだから、落ち込んだって仕方ないよね」
すると突然、サンダースがぴたりと耳の動きを止めた。次の瞬間、素早く飛び起きて、周囲を鋭く見回しながら低い唸り声をあげる。
「ギュルルル…」
「どうしたの?」
何か嫌な予感がして立ち上がった。
「帰ろうか」
「ならひとりで帰るんだな!」
不気味な男の声が背後からした。