第6章 予選、野望、そして仲間
「だめだ」
なおも譲らないグリーン。下手に言い返したら倍になるのは目に見えている。ならば、泣き虫な自分の特性を逆手に取る。
「グリーン、おねがい」
納得させようと、顔の前で手を合わせ、サンダースと共にウルウルとした瞳で訴えかける。
「お前ら……なんだよその目は」
「試したい連携も思いついたの!すぐ戻るから」
「ダー」
グリーンは腕を組み、鋭い視線で睨み返してくる。数秒間見つめ合った後、ワザとらしく大きくため息をつき、かぶりを振った。
「ったく……何かあったらすぐオレに連絡しろよ」
「うん!」
サンダースと前足をタッチして喜び合う。グリーンがピジョットを呼んで後ろを向いた隙を見計らい、リーフちゃんが耳打ちしてきた。
「心配症に見えるかもだけど、それだけ大事にされてるんだよっ」
「そうなのかな」
「誰がどう見てもそうだよ!」
私が弱くて頼りないからだと思っていた。けどそれを伝えたら、リーフちゃんに気を使わせてしまうと思い、胸の内に留めておく。
「でも、グリーンの言う通り、最近嫌な噂も聞くし、無理しないで早めに戻ってね」
「うん」
「んじゃ、オレはもう行くぜ」
グリーンがこちらへ振り返る。返事の代わりにリーフちゃんにアイコンタクトを取って会話を終わらせた。
「グリーン、リーフちゃん、またねー!」
ふたりを見送った後、サンダースと特訓を開始した。
「よし、サンダース!バディーズわざの連携するよ!」
サンダースは気合い充分!といった様子で吠えて応える。
「いけっ!かみなりっ!」
バディーストーンをサンダースにかざす。けど石は光らなかった。
「あれ?もう1回!」
と言って、再びバディーストーンを高らかに上げた。しかし何も起こらず、太陽の光を乱反射して終わる。休憩を挟んで何回か試したけど、ただの一度も石が反応することはなかった。
「今日はうまくできないみたい。ごめんね」
きょとんと首を傾げるサンダースに、特訓に付き合ってくれたお礼にきのみをあげた。美味しそうに齧り付く様子を横目に、海の向こうの水平線を眺める。
うまくいかない理由はなんとなく自覚している。
バディーストーンが呼応しないのは、きっと私が焦っているからだ。