第2章 Ever green!①
自分で言って気がついた。
そうだ。目標だったグリーンと今、私はまた、こうして向き合っている。
ただ何もせず数年間過ごしてきたわけじゃない。
さっきも負けてしまったけど、以前に比べれば戦略を練って、焦らず冷静に戦えていたはず。
少しは成長してるはず。
それに、パシオで会って以来、グリーンは毎日手合わせしてくれている。忙しいはずなのに、毎日、毎日…。
私を育てようとしてくれている、その思いから逃げてはダメだ。
自分を奮い立たせ、グリーンをにらみつけた。
「だから、いつかグリーンを倒してジムバッジを貰う!ぜったい!」
「おっ?急にその気になったな」
「WPMだって優勝してみせる!」
勢いにまかせすごい宣言をしてしまった。
「言うじゃねーか。そういうの嫌いじゃないぜ」
グリーンは、機嫌よく笑い声をあげると、私の頭をわしゃわしゃした。
「ほ、本気だから!」
「分かってるよ」
頭を撫でられ、恥ずかしくて俯く。
私の扱いは相変わらず子供扱い。
そうやってからかって、私の反応を楽しんでいる。
嬉しいはずなのに苦しい。
妹みたいのはもう卒業したいのに。
膝を抱え、海の向こうを眺めた。
どこまでも続く青い水平線。
つい威勢よく「勝つ」なんて言ってしまったけど、海の広さを目の当たりにすると、自分の存在がちっぽけに思えてくる。
「はやくグリーンの隣に並びたいのに」
「もういるだろ?」
「ポケモントレーナーとしてだよ。…隣で戦いたいの」
そう言った刹那、グリーンの手が私の頬に触れた。
指先が頬を優しく撫ぜる。