第3章 私の大切な継子の話
「……悲鳴嶼さん。私を強くしてください。生憎私はその方法が分からなくて困っているんです。」
_ギュ。と私の羽織を握りしめたは息を大きく吸ってから少し距離をとってハッキリとした声を出した。
「私の生きる意味は悲鳴嶼さんで、私は悲鳴嶼さんを守りたいんです。」
私はその言葉に一瞬目を見開いた。淀みのない声で私を生きる意味だと告げ、守りたいと迷い無く言い放ったこの奇天烈な娘はいったい何を考えているのだろうか。
「お前に守られる程、私はひ弱では無い。」
【自分が守られる。】そんな事は生まれてこの方考えたことも無かった。
「だから強くなりたいんですよ。」
それでも、何故か_クスクス笑いだした奇天烈な娘を自分は腹の底から拒絶することが出来ない。
「私が死にそうになったら、背を叩いて下さい。
それだけで私は生きなければって思えるんです。」
何故、1度幸福を奪い地獄(ココ)へ引きずり込んだ私に対してこんなにも優しい声が出せるのだろうか。
「…貴方が与えて下さった命です。
だから、役に経つように仕立てあげて下さい。」
自分は今どんな顔をしているのか、何故か煩い自分の心音は聞こえては居ないだろうか。そんな事を考えながら私は小さな身体が冷えぬように…出会ったあの日と同じと様に…。背を擦りながらを抱きしめた。
「今は、それで許してやろう…。
いつか、しっかり1人で歩きなさい。」
私の問に答えた小さな『はい。』という声を聞きながら小雨の音を合わせて聞いた。
生ぬるい、そんな世界で幸せになって欲しい。何故かにはそんな思いを託したくなる。それが、彼女の魅力なのだろう。
「ねぇ、泣きすぎですよ悲鳴嶼さん。」
「…………南無。」
この桃の花のような娘が幸せになれる世界を。そう思い大粒の雫を流し、ソレを笑われた夜。
の笑い声は小雨のようでやたらと優しかった。