第3章 私の大切な継子の話
□奇天烈な少女
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「………。」
「雨など眺めてどうしたんだ。…風邪をひくぞ?」
稽古を始めてから、はメキメキと頭角を表した。どんな鍛錬にも文句1つ言わず、教えたことはまるで乾燥したヘチマの様に吸い込んでいく。
何の因果か、日輪刀の色変わりは私と揃いの色で異様な程発達した筋肉はこれまた私と揃いの武器を軽々と振り回す。そんな彼女は大抵笑顔を纏っているのだが、屋敷に迎え入れて初めての雨の夜。黙って縁側で外を眺める彼女は、なんとも言えぬ憂いを纏っていた。
「悲鳴嶼さんは、不思議に思いませんか?」
声は沈む日のように落ち着いていて酷く優しい。
「鬼も人なのに何で殺さないとならないのか。」
しかし、その言葉の内容は穏やかなものでは無かった。
「鬼は、人ではない。元が人であっただけだ。」
真実を告げた私には一息ついてから静かに謝って、言葉の真意に着いて語り出した。
「いや、道理は私も分かっているんですよ。」
この短い期間でも色々と理解したのだろう。声色に嘘はないが、珍しく不安を纏っていた。
「それでも、中々理不尽な事ですよね。」
恐らくだが、はこの心根を抱えても立ち止まらずに歩ける人間だ。何故かそれが分かったので、良く似た人間について語ることにした。