第3章 私の大切な継子の話
「ちゃんもとーっても可愛いわよぉ?」
「何ですかそのボサボサの頭は!!散髪をして髪を結いますから早く食事を済ませて下さいっ!!」
「う、うんっ!!すぐ食べる!!」
しのぶの言葉に慌てて茶碗を持ち上げたをしのぶが慌てて止める。はこのまま素手で食べるつもりなのだろう。既に米に手を突っ込もうとしているのでその未来は恐らく確定だ。
「だ、駄目ですよ!!ほら、行儀よく!!」
「うー。行儀よく早く食べるの難しいよ。」
「な、ならゆっくりでいいですから!!」
世話をやくしのぶと世話をやかれるはまだ随分幼い。まるで可愛らしい姉妹のようなその姿にカナエが鈴のような品の良い笑い声を上げた。
「ふふっ、可愛い。」
「……昨日とはまるで別人の様だ。」
昨日の燃えるような娘はどこへ行ったのか。たった1晩。それだけでこの娘の心境はこんなにも可愛らしく変わるものなのか。と私が驚愕していると、カナエは私にしか聞こえぬ様な声でポソッと呟いた。
「強い子…なんですよ。とっても良い子。」
目の見えぬ私にもカナエの顔は安易に予想がついた。きっとこれでもかと優しく微笑んで、それから少し切なそうに2人を見つめているのだろう。
「…しのぶの…良いお友達になれそう。」
「あぁ、そうだろうな。」
【友達】そんな生ぬるい関係をこの地獄のような世の中で築き上げられる訳が無い。それでもこの幼い2人にはそんな幸せな未来を。と思ってしまう。
心の臓を掴まれた様な心地になりながら、楽しそうな幼子の笑い声を聞いた、そんな幸せな朝だった。