第3章 私の大切な継子の話
「ふふっ、まるで恋をしてるみたい。」
「残念ながらそれはお門違いだ。」
もしも恋ならば、こんな地獄には連れては来ないだろう。ましてや、鍛えあげよう等とは思わないはずだ。それでも、異様なほどあの少女に興味を唆られるのは確かだった。
「だが、そうだな。幸せそうな顔も見てみたい。」
あの少女はどのようにして笑うのか。彼女が絶望を超えた先に何を見るのか。それを素直に知りたいと思う。
「…………南無阿弥陀仏。」
「ふっ、ふふ。随分優しいお経ですねぇ。」
カナエの鈴のような笑い声を聞きながら、彼女の前途を願って経を唱えた。願わくば、目が覚めた時に私の肋をこれ以上折らないで欲しいと情けない事を思いながら。