第3章 私の大切な継子の話
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「南無…。(…何をしているんだあの娘は。)」
ボロボロの家の前に大人2人の亡骸と膝まづき鬼に両手を伸ばす少女。雨の中のその光景は目の見えない私にも異様だとすぐにわかった。
「………お腹、空いてるんでしょ?」
雨音の中響いたその声はやたらと優しかったのをよく覚えている。この少女の声はやたらと耳に残る。
「……………あ、あぁ…っ…!!」
「……遅くなって、すまなかった。」
私が、この少女だけでも…。と
鬼の首を狩ると、娘は慌てて灰になる鬼の元へ進み灰をかき集め始めた。
「…何をしている。やめなさい。」
一体何をしているんだと、少女の細い腕をつかみその奇行を止めると少女はツンとした声を出した。
「………何で、殺したの?」
「ソレは鬼と言って人を喰らう化け物だ。」
殺した理由はそれしかない。端的に答えた私の言葉を聞いてから少女はゆっくり立ち上がった。
「化け物だから殺すの?」
唸るような声に思わず掴んでいた腕を離した。
「化け物だから腹を減らした女を切るの?」
確かに、先程切った鬼は女であって、腹を減らしていたのだろう。ソレが分かっていても、鬼である限り消し去らなくてはならない。それが道理だ。