第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「…人懐っこい蝶なんているんだな。」
「……。ふふっ、そっか。そうですよね。」
「………何だ?何笑ってんだよ。」
そんな姿が生前のカナエさんの様で、
私はこの蝶にカナエさんが乗り移ったんだと
都合の良い解釈をした。
「…この子はねぇ。応援してくれてるんだよ。」
カナエさんなら私が恋をして生きたいと
そう告げたなら『がんばれぇ。』と
少し気の抜けた語尾で微笑みながら
そう言ってくれるだろう。
「応援?……何の応援だ?」
不思議そうに首を傾げる玄弥君を
大切にすることを、心の底から嬉しそうに
応援してくれると思う。あの人は、そういう人だ。
「…内緒っ!!一緒に帰ろうっ!!」
しのぶの決意を止めるつもりは欠けらも無い。
目の前のしのぶに寄り添う事、
覚悟を受け入れること。
ソレが友達として私にできる唯一の事だから。
それをカナエさんが望んでいない事は知っているけれど、ソレでもソレは曲げることが出来ない。
「………え、な…何してんだよ!!」
「…手繋いで帰ろ。……やだ?」
そんな事を頭の端で考えながら、
__ぎゅ。っと玄弥君の手を握ると
紅葉みたいに赤くなった彼は気まずそうに顔を背けた。
「……い、嫌では、ねぇけど。」
私がこの赤い顔を好きだと思って、
守りたいと思って、生きたいと思っても。
先程楽しそうに飛び立った蝶は
何も咎めはしないのだと思う。