第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「「(こ、ココからどうしよう。)」」
だがしかしだ。
何故、照れ屋の彼はこんなに自然に
私を抱き留めたんだろうか。
ここ数日、玄弥君の顔を見ると
滝行の時より心臓が煽ってしまう私にとって
コレは発狂案件である。
「(…い、勢いで抱き締めちまったけど
コレまずいよな!!どうすりゃいいっ!!)」
何故か突然__ピタッ。と止まった彼は
一体何を考えて腕の力を強めたのか私には分からない。
「(や、やばい。泣いてたくせに
今はドキドキしてるとかそれ狙いみたいに
思われたらどうしよう!?え、どうしたら。
…玄弥君…。いい匂いだな。どうしよう。)」
女性の心は英国の天気の様に
変わりやすいと聞いたことはあるが、
先程まで これでもか。と感傷に浸っていた私が
今や玄弥君のいい香りと温かさに
絆されかけていてるのは人としてどうなのだろうか。
そんな事を考えて居ると頭の上から声が聞こえた。
「……ん??」
「…………ん?」
玄弥君の間抜けな声につられて顔を上げると
綺麗な蝶が玄弥君の黒髪のてっぺんに鎮座していた。
「…なんだ?俺の頭に止まったぞ?」
首を傾げても飛び立たない蝶に自然と手が伸びた。
「(……カナエさん?)」
何故か、その蝶はカナエさんの様な気がして
私がそっと手を伸ばすと、
蝶が私の方へ向かってふわりと舞った。
「………わぁっ!?」
突然の動きに慌てて後ずさったが、
蝶はそれを気にもせず__ふよふよ。と
私の顔周りを楽しそうに浮遊する。