第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
こんな事があったから、
悲鳴嶼さんはの事を【自慢の継子。】…そんな風に思っているんだな。とずっと認識していたのだが『そうではないんだ。』と、俺はある日理解した。
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アレは、俺と悲鳴嶼さんの2人で
朝食を食べていた時の事だった。
「遅いですね。
何時も無理にでも朝食の時間には帰ってくんのに。
何かあったんかな…。」
余程遠い任務でない限り、は朝食の時間には帰宅して一緒に食卓を囲むのだが、今日はその姿が見えない。
「は大丈夫だ。…今戸の開く音がしただろう?」
「き、聞こえ…。…あ!!帰ってきましたね!!」
戸の音は聞こえなかったが足音が近づいて来ている。俺がその足音に安心していると襖が__スっと空いた。
「…悲鳴嶼さん…っ…すいま…せん。」
予想外の姿で謝りながら部屋へと入ってきたに俺が目を見開き固まっていると、悲鳴嶼さんが勢いよくの元へと駆け寄って声を上げた。
「何があった!!何故先に蝶屋敷へ行かなかったんだ!!隠は何をしているっ!!…あぁっ!!」
「だ、大丈夫です、死にゃしませんって…。
ただ、ちょっと…廊下…汚しちゃて…っ。」
血塗れのは
申し訳なさそうに笑ってから突然意識を失った。
「何を馬鹿な事をっ!!玄弥っ!!留守を頼む!」
「は、はいっ!!」
大怪我をして帰ってきたを見た悲鳴嶼さんの慌て様は異常で、気を失ったを抱えて走り去った速度は目でも追えぬほどだった。
これは後で聞いた話なのだが、が何時も朝食迄に帰ってきていた原因はどうやら心配性の悲鳴嶼さんだったらしい。